プレスリリース
JAL、世界で採用が進むEBT(Evidence-based Training)を導入へ
~ パイロット訓練・審査の面からもさらなる安全を追求していきます ~
JALは、2017年4月に施行された国の新たなパイロット訓練・審査制度、Competency-Based Training and Assessmentプログラム(以下、「CBTAプログラム」)を適用し、同制度のもとで、現在世界でも採用が進んでいるEvidence-based Training(以下、「EBT」)を導入するべく準備を進めてまいります。
既存の訓練・審査とEBTの違い
現在のJALのパイロットへの訓練・審査は、既存の訓練・審査制度(以下、「従来制度」)に基づき国が定める要件に従って訓練・審査項目を実施しています。一方、今後導入予定のEBTでは、国の新たな制度であるCBTAプログラムを適用し、国の承認の下で、JALが主体となって柔軟に訓練・審査を開発・実施・改善することになります。
EBTの名称にある“Evidence-based”とは、「証拠に基づく」という意味です。ここでの「証拠」とは、世界中の航空会社の実際の運航や訓練などで得られたさまざまなデータを指します。EBTでは、これらの膨大なデータを分析し、航空会社全体およびパイロット個人の課題を抽出し、それらに対処するための効果的な訓練・審査を、航空会社が主体となり開発・実施・改善していきます。
従来制度は初期のジェット機における全損事故などの分析を踏まえて制定されており、機材故障発生時における手動操縦による離着陸など、パイロット個人の基本的な操縦技術(テクニカルスキル)の習得に重点が置かれた訓練・審査となっています。
しかしながら現代の航空機の運航では、機材故障のない状況での航空機の自動化や複雑化した運航環境に起因するパイロットのヒューマンエラーが要因となるような事故や不安全事象が多く発生しています。このような時代の流れに伴い、パイロットに求められる能力も時代とともに世界的に変化してきています。例えば、自動操縦を適切に使用し航空機の作動状況を監視するといった手動操縦技術とは異なる「テクニカルスキル」や、認知力・判断力・コミュニケーション力などの「ノンテクニカルスキル」と呼ばれる能力などの重要性が増しています。
「テクニカルスキル」や「ノンテクニカルスキル」を含む実際の運航に必要な能力を効果的に向上させるため、世界では、従来制度に加えて新たな制度を採用する国が増えてきています。日本のCBTAプログラムもその制度のひとつです。
EBT導入を可能とする日本の新たな訓練・審査制度
今般CBTAプログラムが施行されたことにより、日本の航空会社は、新たな選択肢としてこのプログラムを適用した訓練・審査を導入することができるようになりました。
CBTAプログラムでは、航空会社が同制度を適用するためのさまざまな要件を満たすことにより、国の承認の下で、航空会社が主体となってISD(Instructional System Design)という訓練・審査の開発・実施・改善プロセスにより訓練・審査を運用することができます。この新たな制度を適用することにより、EBTを導入することが可能となりました。
パイロットに対する日本の訓練・審査制度
従来制度 |
CBTAプログラム(2017年4月制定) |
国が定める訓練・審査の要件に従ってパイロットに対する訓練・審査を実施 |
国の承認の下、航空会社が主体となって柔軟に訓練・審査を開発・実施・改善することが可能。 当社ではこのプログラムを適用して、EBTを導入。 |
JALではCBTAプログラムを適用しEBTを導入
JALではすでに4年間にわたり、CBTAプログラムと同様の考えを取り入れた訓練・審査を自主的に運用してきましたが、これは従来制度の下での取り組みであり、柔軟に訓練・審査を開発・実施・改善していくには限界がありました。
しかしながら、CBTAプログラムを適用しEBTを導入することにより、これまでJALで蓄積したノウハウやデータを活用し、実際の運航や訓練・審査で得られるデータ分析を基に、JALの課題に即した効果的な訓練・審査の運用が可能となります。これにより実際の運航に必要なテクニカルスキルやノンテクニカルスキルを含むパイロットの能力向上を図り、これまで以上に安全に寄与することになります。
JALでは、2017年度から航空局との調整を行いながら各種訓練・審査に段階的にEBTを導入することを計画しています。EBTの導入により、パイロットの訓練・審査の面からもより安全で高品質な運航を追求していきます。